アトリエ「揺り籠」-WEB 絵画教室(中級編)  | 最初の画面 | 前の画面   |  次の画面   |  最後の画面   |
File.1_Idea souce

絵画制作のための取材とはどんなものなのか、具体的に示してみようと思います。私の場合は手描きスケッチよりカメラ取材が多いのですが、それは、作品全体を形作る原型でもありませんので、「何でこんなものが取材なんだ ? 」と思う方も多いかと思います。取材は、眼に入ったもので、ちょっとでも何か感じるものがあったらカメラに収めます。取材のコツは、なるべく小さなものや部分に眼を向けることです。複雑で具体的な映像も、フレームで小さな部分に仕切ってしまえば、それは、おぼろげな全体として見ることが出来ます。つまり、これがこれから制作するであろう何らかの作品の原点になるわけです。撮影されたものは、殆んどそのままの形で背景として利用されることもありますし、また、変形・加工されて全くちがう物に変貌してしまうこともあります。
カーテンに映った朝顔の影
ワイングラス
樹木を燃やした後の炭 朝顔


File.2_Back Ground

絵画制作の第1段階が取材であることは言うまでもありませんが、次のプロセスは背景の制作です。
背景といっても、この段階ではまだ漠然としたイメージを想定して制作するものですから、具体的なものを描くわけではありません。(大き目の平筆や刷毛を使って描きます)
しかし、絵画作品全体のイメージを決定するものですから、最も重要なプロセスといっても過言ではないのです。
つかみどころもなく、つまらない作業のようにも思えますが、じつはこの背景の制作段階で様々な映像やアイデアが浮かんできたり、 構図が決定する瞬間でもあります。
私の作品の多くは、こういったプロセスを踏んで制作されています。…皆さんもぜひ一度試してみてください。
やってみると意外と奥が深く、おぼろな画面の中にも意図しない情景が浮かんできます。

Back Ground-1    Back Ground-2    Back Ground-3    Back Ground-4
File.3_Composition_1/Balance
単純化してみるとよく解る。   ここでは構図のお話です。絵画とはただ描きたいものが画面の中に入っていればよいというものではありません。絵を描くときに構図の問題はどうしても悩むところですが、構図に求められている様々な要素を知っていれば、決して難しいことではありません。では、その構図に求められている要素とは何でしょう ? 
構図で一番大事なのは「バランス」です。バランスとは、画面の中心を基点としたときの上下左右のつりあいのことです。画面の中心に糸をつないでぶら下げたときに、どちらかに傾きそうな感じがするのはバランスがとれていないということになります。それでは上下左右に同じ分量のものを配置すれば良いではないかと思うでしょうが、残念ながらそれでは魅力的な絵にはなりません。わざとちがう大きさのものを配置して、中心からの距離を調節することではじめて生き生きとした画面構成が得られるのです。…ここで言う分量とは、面積や明暗・色彩から感じ取れる重量感のことです。
上の図のように画像を単純化してみると、画面の右側が重たく感じられることがよく解ります。でも、この部分は主要なエレメントですので消し去るという訳にはいきません。
構図における各要素の位置や大小関係はそれぞれの部品の持つ内容によって決まってくるものです。

バランスは、物の大小や配置だけで決まるものではありません。右の2点の図は、明度を上げたり、彩度を下げることで見た目の重量値を下げてバランスを整えられることを示しています。
  特に風景画を描くときには、自然は必ずしも理想的なバランスで成り立っていないことを知っておくべきです。 右奥の木々の明度を上げることで見た目の重さを軽くした。
file.4_Composition_2/Movement
油彩作品 「朝顔」   絵画を構成する上でバランスが大切なのは当然ですが、求められるべきは絶対的な安定ではありません。絵画を魅力的なものにするには、動き、方向性、緊張感、を伴った危ういバランスです。倒れそうで倒れない、落ちそうで落ちない、見えそうで見えない…などといったものです。それに加えて、物には前後・表裏・上下といった方向性がありますので、それを意識して構成することも大切です。
ダイナミックな構図を追求するのも結構ですが、方向性が片方にだけ向かう画面構成は、画面が歪んでいるように見えて不快感がするものです。
絵画とは料理のようなもので、現実(モデル)は単なる原材料に過ぎません。向き合っているモデルが理想に叶わないものであったら、必要に応じて向きや大きさを変えたり、変形・誇張したり、消したり、付け加えたりして始めて絵になるのです。
 
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夏目漱石の「草枕」という小説の冒頭に「越すことのならぬ世が住みにくければ、住みにくいところをどれほどか、寛げて、束の間の命を束の間でも住みよくせねばならぬ。ここに詩人という天職が出来て、ここに画家という使命が降る。あらゆる芸術の士は人の世を長閑にし、人の心を豊かにするがゆえに尊い。…」という一節があります。ちょっと厭世的とも取れる言葉ではありますが、このことは、絵画はもちろん、凡そ芸術というものは、人々の心を癒すものでなければならず、決して人を不愉快にさせるものであってはならないということです。
振り返ってみると、まだ幼かった私が美術の道に足を踏み入れたのも、背景にそういった理屈があったからかもしれません。子供の私にはそんな理屈はどうでもよかったと思いますが、まずは自分自身を癒したかったのでしょう。今では、私
が生きるために必要不可欠なものになっています。

ギャラリー「揺り籠」で紹介している作品を見ていて、ひとりの作者のものとしてはいくつものスタイルがあることに気づくと思いますが、私は、作品のスタイルをひとつに絞る必要はないと思っています。スタイルとは所詮デザインです。環境や時に応じて、実験的な試みがあって当然ですし、作品の個性は造形的な独創性によって量られるものではありません。一連の作品を貫いている感性こそが個性といえるのではないでしょうか。

スタイルや時流にこだわることなく、時には思いついたスタイルを模索しながら、アトリエ「揺り籠」は、これからも新しい作品をつくり続けていきます。
Photo/水仙
Update : 2016-05-01
Digital作品/「不思議」
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